アパート・マンション・テナント物件の相続

1、アパート・マンション・テナント物件の相続トラブルとは?

アパート・マンション・テナント物件(以下「収益物件」といいます)の遺産分割では、その物件の評価額、誰が取得するかという点を巡り意見が対立することが多くあります。収益物件の場合、実勢評価と相続税評価の乖離が大きくなり易いため、各相続人が収益物件の帰属と絡めて自己に有利な評価額を主張して対立が先鋭化しやすい傾向があります。
他方で、遺言が存在するため遺留分侵害額請求をする事案では、収益物件の帰属は遺言で確定しているため、収益不動産の評価が主な争点となります。

2、アパート・マンション・テナント物件の相続の特徴と注意点

《ポイント》

遺産にアパート・マンション・テナント物件などの収益不動産が含まれる場合、相続人間で不動産を分割するというだけでなく、収益不動産の賃借人・融資を受けている銀行との関係も処理する必要がある点に注意が必要です。
また、小規模宅地等の特例の適用対象が複数ある場合は、どの物件に特例を適用するかについて相続人全員の合意が必要なことに注意が必要です。

2‐1 収益不動産の遺産分割の場合、評価額の確定が重要な争点になります。

収益不動産は、通常、遺産の中でも特に価値が高い不動産であることが多く、取得希望が競合することが多くあります。また、取得を希望しない場合でも、収益物件の評価が代償金の額の多寡に直結するため、評価額の確定で激しく争われることになります。

そのため、収益不動産の評価を相続人間の協議で定めることができず、裁判所で不動産鑑定が実施されるというケースが多くなります。不動産鑑定を行う場合、遺産規模が大きくなると数百万円の鑑定費用を裁判所に納めることから、これらの資金準備も重要になります。

2‐2 賃借人との関係

収益不動産を相続する場合、賃借人との賃貸借契約も承継することになります。そのため、契約書の引継ぎ、敷金・保証金の処理が必要になります。また、管理会社と契約していた場合は、管理契約も承継し、今後の管理についての認識を共有するなども作業も必要になります。

2‐3 金融機関との関係

収益不動産は相続税対策の目的で、金融機関から融資を受けて建設・取得していることが多く、このような場合は、遺産分割の結果に合わせて、金融機関との関係で債務(借入金)を承継する手続が必要になります。また、特定の相続人が連帯保証・債務引受けをしている場合は、遺産分割の結果に合わせて処理をすることが必要ですので、遺産分割協議と並行して金融機関とも協議をすすめることになります。

2‐4 小規模宅地等の特例の適用(租税特別措置法69条の4)

小規模宅地等の特例の適用対象が複数存在する場合、分割方法によっては、特例適用対象土地を取得した相続人全員の同意が必要になります。そのため、事案によっては、この特例をどの物件に適用するかが争点化することがあります。
遺産分割協議の際は、この点も踏まえて、初期の段階から特例の適用を見据えて協議をしていくことが重要になります。

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